CDでーた(2009年/角川書店)に掲載された、THE BACK HORNのボーカル・山田将司さんとドラム・松田晋二さん、フジファブリック・ボーカル&ギターの志村正彦さん、ギターの山内総一郎さんのコメントをご紹介します(以下に抜粋)。
この記事は、2009年に発売されたイエロー・モンキーのトリビュートアルバム「THIS IS FOR YOU~THE YELLOW MONKEY TRIBUTE ALBUM」参加についての対談で、それぞれのイエロー・モンキーへの熱い思いや、トリビュートアルバムの選曲について語られています。
「ディズニーみたいな感じあるよね。輝いてて、華やかで、なおかつ儚さとかもあるファンタジー」
ー初めてTHE YELLOW MONKEYを知ったのはいつごろだったの?
松田晋二:俺は高校生の時に「太陽が燃えている」のシングルを買って、そこから昔のアルバムに遡っていったんです。あの人たちのもっている、いい意味での生臭さというか、生々しい匂いみたいなものがすごい好きだったんです。
山田将司:俺も「太陽が燃えている」で初めて知って、シングル曲はカラオケでもよく歌ってたんだけど。今思うとやっぱ生臭いというか、なんか鼓動してる感じかな。血の匂いっていったら失礼かもしれないけど、そんな生々しい感じが、自分の中で引っかかってたんだと思います。
志村:僕は高校時代にコピーバンドをやってたんですけど、その時のギタリストが「どうしてもイエモンやりたい!」って言い出して、「パンチドランカー」っていうアルバムを聴かせてくれたのが最初。で、彼と一緒にライブを観に行ったら、ものすごくカッコよくてビックリしました。
松田:ライブ、カッコよかったよね!
山田:俺、ライブは見てないんだよな。
山内総一郎:僕も、生のライブは見てなくて…。THE YELLOW MONKEYは高校生の頭ぐらいの時に、自分もコピーバンドでギター弾き始めたころに音楽番組のヒットチャートで知ったんだけど。とにかく大人のバンドだなっていうか、高校生の男子から見てもセクシーな人たちだなっていう感じがあって…。そういうところにすごいひかれていました。
志村:正直、僕らの時代のロックスターって感じだったよね。僕らの気持ちの代弁者みたいな人はいっぱいいたけど、わかりやすく“ロックスター”っていうのは、THE YELLOW MONKEYしかいなかったんですよ。それぐらい、なんか…超越した存在だった。
松田:うん。そうだったと思う!ひょっとしたらこの人たち、本当はいないんじゃないかって思うぐらい、自分の中では遠くて大きな存在でした。
ーそれぐらい、ほかにはない特別な存在感を感じてたんだね。
松田:ええ。俺の中では、ある種幻想というか…。異空間に連れて行ってくれる魔術師みたいな感じでしたね。だからライブを観に行っても、その場でダイレクトにドカーンっていうエネルギーはもちろんあって、それがすごい生々しい感じはするんだけど、なんかライブ終わって帰ると“あれ?夢の中だったのかな…”みたいな感じがあって…。そういう感じがたぶん自分の中での大きさというか、ロックスター感だったのかなって思います。
志村:ある意味、ディズニーみたいな感じあるよね。輝いてて、華やかで、なおかつ儚さとかもあるファンタジー。
松田:そうそう、キラキラしてる印象がある。
山内:ゴージャスなところもたくさんあったしね。こんなに輝いてる人たちがいたんだ?!っていう感じがあった。
山田:それでいて、バンドの音だとか歌詞とかがすごく人間っぽい。その合体感が魅力だったんじゃないかな。なおかつそこに、俺らは多感な高校生の気持ちを受け入れてくれる、器の大きさみたいなものも勝手に感じたりもしてたんだと思います。
ー今回のトリビュート盤の選曲は、どうやって決めたの?
山内:うちは、志村君が「『Four Seasons』をやりたい!」って言ったので(笑)
志村:コピーバンドで歌ってたから、これならすぐに歌えるって(笑)。っていうか、“まず僕は壊す 退屈な人間はごめんだ”っていう出だしの歌詞があるじゃないですか。あの言葉が当時から、なんて魅力的なんだろうって思ってて…。それだけでもう、多感な高校生はやられちゃってたんです。
松田:俺らは、俺が率先して色んな曲を聴かせたりしてたんだけど。最終的に「球根」を選んだポイントは、歌詞。すごい生命感の凝縮された、この生々しい歌詞をもった曲を、将司の歌と今のTHE BACK HORNの熱みたいなものでやらせてもらったらどうなるのかなって考えたんです。結果、奇跡的に合致したというか…。
山田:完璧に消化できたし、いい感じに仕上がったんじゃないかと思います。
山内:僕らも、自分たちの持ち味は出せたなって感じてるけど…。でも、カバーって難しいですよね。原曲のよさを知っているだけに、どこまで崩していいのかとか、どうやって自分たちのよさを入れていこうとかって、すごい考えちゃう。で、最終的に“この感じだ!このアレンジだ!”ってなったら、結局、原曲と一緒だったりするし(笑)。でも、そのプロセスがすごい有意義だったし楽しかった。
松田:そうだね。僕らもすごい悩みながらアレンジしたけど。それによって逆に、この曲の深みをもっと知って、ますます好きになったりもしたからね。
志村:それにしても、今回のトリビュートアルバムの楽曲見てみると、全部名曲ですね。名曲以外にない!
松田:まさに!っていうか俺、基本的にTHE YELLOW MONKEYの曲は全部好きだから(笑)
志村:俺も全部好きだよ(笑)
松田:だから正直言うと、ほかにもやってみたい曲はいっぱいあったんですよね。
山内:THE YELLOW MONKEYの曲って、“これぞイエモン”っていうコード進行があるじゃないですか。例えばキーがCだったら、絶対次は3度セブンのE7にいくっていう。僕はあれがすごく好き。
山田:いいよね、あの感じ。なんか、日本人になじみのある感じというか…
山内:うん、すごく哀愁のあるコード進行なんだよね。
松田:あと、吉井さんの歌詞がすばらしいと思う。なんていうか、自分の奥底からわき出してきたものがしっかり人に伝わって、さらにその先の世界をみせてくれるような歌詞なんですよね。
志村:しかも、わりと抽象的なことも歌ってるから、その言葉の内容の深いところを実生活の中でしっかりわかってないと、ちゃんと歌えないんだなって。あらためて思いました。
CDでーた(2009年/角川書店)より抜粋
司会/撮影者:掲載なし
<記事内で登場した作品>