永井豪さんとイエロー・モンキー


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別冊カドカワ「総力特集 吉井和哉」(2007年/角川ザテレビジョン)に掲載された、漫画家・永井豪さんのコメントをご紹介します(以下に抜粋)。代表作である「デビルマン」や「ハレンチ学園」などにロビンが多大な影響を受けていたことを通じて、イエロー・モンキーのシングル「SHOCK HEARTS」が曲のイメージから永井さんの絵が合うとジャケットイラストが依頼されました。この対談では、「SHOCK HEARTS」のジャケットイラスト依頼時のエピソードや2人の創作活動についてなどが語られています。

「(『SHOCK HEARTS」のジャケットは『キューティーハニー』のポスターを見て『これだよ、こんなのを描いてほしいんだよ』って」

吉井和哉:僕はアニメの「マジンガーZ」ですら、エロスを感じるんですけど、これはなぜなんですか。エロいシーンは全然出てこないんですよ。僕だけなのかな?

永井豪:なんででしょう(笑)

吉井:エロスを表現するのは、必要なことだと思っていらっしゃるんですよね?

永井:人間はまず本能ありきですからね。僕なんか自分の絵よりも手塚先生の絵にエロスを感じてたんですけど、不思議ですよね。人それぞれにエロスを感じるポイントが違う。ただ、生と死とに関わることではあるんでしょうね。極限状態にあると、人間って子孫を残したいと思うらしいですし。

吉井:僕なんか、毎日極限状態なんで。たくさん子どもを残したいなって常に思ってます(笑)

永井:僕が最終的に漫画家になろうと決心したのも、死ぬんじゃないかって思いこみがあったからなんですよ。高校3年の時、2か月くらい下痢が止まらない状況があって、どんどん痩せてきて、兄貴に話したら、「それは癌だよ」って言うんですよ(笑)

吉井:それはひどい(笑)

永井:「30代で下痢が続いた人が大腸ガンだと気づいたら、すぐ死んだ」って言う。それでこれはもう死ぬんだなと。想像力が発達していたから、自分が徐々に衰えて死ぬシーンが思い浮かぶんですよ。うちは父親が小学校6年生の時に死んだんですが、男の兄弟が5人いて、にぎやかで楽しい家族だったんですが、自分が死ぬと思った時に自分のまわりに透明のバルーンができて、家族の中に入っていけなくなったんですよ。

吉井:わかります。

永井:自分は一人なんだなって。自分が消えてしまった時に家族も友達もすぐに俺のこと忘れてしまうんじゃないかなって思った時にものすごい寂寥感が湧いてきて、自分が生きてた証拠を残したいって思ったんですよ。たまたま漫画が好きで、たくさん描いてたんで、生き残ったら、漫画家になろうって。結局、病院に行ったら、「大腸カタルなので、この薬で治ります」って、薬をもらったら、あっという間に治ってしまったんですけど(笑)

吉井:僕も父親が26歳で亡くなっていたので、自分もどうせそれぐらいで死ぬだろうなって思ってたんですよ。そうすると、やっぱりバルーンが見えてきて、はじいちゃって、人の中に入っていけない。どうせ死ぬなら、自分のことを少しでも伝えて死にたいなって。それが音楽をやるきっかけになってますね。

ーまさに同じような動機で創作活動を始めたわけですね。

ー「SHOCK HEARTS」のジャケットのいきさつは?

吉井:当時ギャルが湧いて出てきていた時期で、ギャルは夜になると昆虫のようなエイリアンになってエッチしまくるんだろうなというテーマで書いたので、これは永井先生に描いていただくしかないなって(笑)

永井:吉井さんが事務所に来られた時に「キューティーハニー」のポスターを見て「これだよ、こんなのを描いてほしいんだよ」って。

吉井:いや、そんなにえらそうに言ってないですよ(笑)。でも描いていただいて、うれしかったですね。ラフの原画も額にいれて、大切にとってあるんですよ。デビルマンの横顔にサインをいただいたんですが、日付が実際は2000年なのに200年になってる(笑)。これはすごいな、めちゃ昔じゃん、超レアじゃんって(笑)

永井:そういう間違いは時々あるんですよ。

吉井:そういうものなんですよ、きっと(笑)。でもそれがどこかで辻褄があっていく。

ー最後に「なんてことしてくれたんだ対談」を終えての感想を教えていただけますか?

吉井:先生がいつまでも若くて、すごくうれしかったです。もっと漫画を描いていただきたいですし、続きをぜひ読みたいです。

永井:「バイオレンスジャック」はまた力を入れて、描きますんで。吉井さんもバンドからソロへとまた違ったテイストで頑張っておられるので、うれしいですね。グループはもう組まないんですか?

吉井:いや、それは分からないです。僕にも「バイオレンスジャック」の続きを描く日が来るかもしれないですから(笑)。ともかくエロスは忘れずに頑張っていきたいと思っています(笑)

永井:エロスは基本ですからね。

別冊カドカワ総力特集吉井和哉(2007年/角川ザテレビジョン)より抜粋

取材・文:長谷川誠/撮影:土田和彦

<記事内で登場した作品>

SHOCK HEARTS

デビルマン


キューティーハニー