音楽と人(2014年/シンコーミュージック)に掲載された、元椿屋四重奏・中田裕二さんのコメントをご紹介します(以下に抜粋)。中田さんは、イエロー・モンキーのファンを公言されていて、椿屋四重奏としてイエロー・モンキーのトリビュートアルバムで「BURN」をカバー、2016年の再集結ライブの初日に放送されたLINEの中継でハリー杉山さんとMCも務められました。この記事はロビンのソロ名義による歌謡曲カバーアルバム「ヨシ―・ファンクJr.~此レガ原点!!~」についてのインタビューで、収録曲を通じてイエロー・モンキーについて語られていましたので、その部分を抜粋して掲載します。
「イエロー・モンキーや吉井和哉は、その日本人らしさから逃げないで、それに強いアイデンティティを持って、最前線で闘ってきたんです」
(沢田研二さんのカヴァー)「おまえがパラダイス」は、本当にジュリーのことが好きなんだな、と思える、物凄く素直なカヴァー。この曲の向こうに、イエロー・モンキーにおける吉井さんがやりたかったこと、が透けて見えるようです。「真珠色の革命時代(Pearl Light Of Revolution)」や「MERRY X’MAS」を思い出しますし、ビートの感じやサビの歌メロは「JAM」っぽい。吉井さんの曲の核は歌謡メロディなんだなって、こういうカヴァーを聴くことで合点がいきますね。
(来生たかおさんのカヴァー)「夢の途中」も良かったです。僕は個人的に「天国旅行」を思い出しました。どちらにも、吉井さんの歌に時々感じる<太陽にほえろ!>感があるんですよ(笑)。哀愁というか、夕暮れダンディズム感。こういうロックバンドなアレンジも素晴らしいですが、思いっきり大野克夫風なアレンジでも是非聴いてみたくなりましたね。
(ピンクレディーのカヴァー)「ウォンテッド(指名手配)」も面白かったですね。ここにはメタルグラム好きな吉井和哉節が炸裂しています。でもピンクレディーの曲自体、すでに作りがロックなんですよ。だから歌謡曲として革命だったし、バンドアレンジでもハマっちゃうんです。<ウー、ウォンテッド!>って唄うところは、それまで歌謡曲の、朗々と唄いあげるスタイルにはなかったアプローチなんで。でもそれを吉井さんがやることによって、ロック感がさらに強くなりましたね。途中で<ある時 謎の運転手~>っていうセリフのパートがありますけど、ここがまたイイんですよ。(イエロー・モンキーがカヴァーしたモット・ザ・フープルの)「ホナルチーブギ―」でも語りがありましたけど、吉井さんの語り、ファンは大好きだと思います。ああやって途中でセリフを挟むのも歌謡曲ですね。
日本のロックバンドって、<どれだけ洋楽をセンス良く取り入れるか>に重きを置きがちですけど。歌謡曲の歴史はむしろ<どれだけ日本の歌に海外のサウンドを融合させるか>ってところでずっと格闘してきたと思うし、僕は、そのひとつの完成形がイエロー・モンキーだったと思うんです。日本語って、洋楽のアレンジにそのまま乗せると、とたんにダサくなるんです。みんなそれにぶつかって、悩んで、日本的な匂いから逃げちゃうんですよね。でもイエロー・モンキーや吉井和哉は、その日本人らしさから逃げないで、それに強いアイデンティティを持って、最前線で闘ってきたんです。
(美空ひばりさんのカヴァー「真赤な太陽」のオルガンに物凄いリバーブがかかってる感じも、わかってるよなあ、と思います。あとヴォーカルにかかってるショートディレイ。サウンド的にはシンプルなバンドサウンドだけど、そういうちょっとしたアレンジにこだわりが感じられます。原曲が持ってるロック感を、もっとわかりやすく表現してますよね。間奏なんてめっちゃイエロー・モンキーだし(笑)。「襟裳岬」も、ローリング・ストーンズっぽくもあり、オルガンはアル・クーパー的なアプローチだったり。
音楽と人(2014年/シンコーミュージック)
より
テキスト/金光裕史
<記事内で登場した作品>
THIS IS FOR YOU~THE YELLOW MONKEY TRIBUTE ALBUM
※椿屋四重奏による「BURN」収録